2012 NEA Jazz Masters
30th Anniversary Award

Ceremony & Concert @ Rose Theater,
Jazz @ Lincoln Center,
NYC on January 10, 2012


39名のジャズ・マスターズ

多くのジャズ・マスターズに囲まれて、
5人の新たなジャズ・マスターズが誕生

 ロック&ポップス・ミュージックにホール・オブ・フェイム(ロックの殿堂) があるように、ジャズ・ミュージックには、NEA (Natioan Endowment for the Arts : 国立芸術基金)による、ジャズ・マスターズ・アワードがある。今年も新たに5人のジャズ・マスターズが誕生し、去る1月10日にジャズ・アット・リンカーン・センターのメイン・ホール、“ハウス・オブ・スウィング” の異名をもつローズ・シアターで、授賞式と記念コンサートが開催された。

ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ


ウィントン・マルサリス(tp)

 NEAジャズ・マスターズ・アワードは、1982年に、長年のジャズ・ミュージックへの貢献と業績を顕彰して始まり、昨年まで128名のジャズ・マスターズが、誕生している。かつてはジャズ界の年頭を飾る国際ジャズ教育者協会(IAJE)の年次総会の3日目に、ゲストのコンボやビッグバンドらの演奏と共に、豪華に祝福されたのだが、IAJEの破綻により、2009年から舞台を、ウィントン・マルサリス(tp)が君臨するジャズ・アット・リンカーン・センターに移し、ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラの演奏をバックに開催されている。今年は30周年のアニヴァーサリー・イヤーで、例年よりも多くの39名のジャズ・マスターズたちが集結し、旧交を温め合っていた。

 
ジャック・ディジョネット(ds)

 

 
シーラ・ジョーダン(vo)

 本年度に顕彰されたジャズ・マスターズは、自己のグループや、キース・ジャレット(p)・スタンダーズ・トリオで活躍する、ジャック・ディジョネット(ds)、長年シカゴ・ジャズ・シーンを支えているヴォン・フリーマン(ts)、オーネット・コールマン(as,tp,vln)のグループでジャズ・シーンに登場して以来、常に鮮烈なプレイで独自の存在感を誇っているチャーリー・ヘイデン(b)、ブルーノート・レコードのアルフレッド・ライオンが契約した数少ないヴォーカリストにして、現在も演奏、教育活動に精力的なシーラ・ジョーダン(vo)、サド・ジョーンズ(tp)=メル・ルイス(ds)・オーケストラの黄金時代を支えたロータリー・フリューゲルホーンの名手であり、また教育者や、ジャズ・ミュージシャンの老後のサポートでも知られるジャズ・ファウンデーション・オブ・アメリカ(JFA)での活動が高く評価されたジミー・オーエンズ(tp)といった顔ぶれだ。ヴォン・フリーマンとチャーリー・ヘイデンは、体調不良で残念ながら代理で、令息、令嬢が出席し、新ジャズ・マスターズの記念撮影は3人となってしまった。


ジミー・オーエンズ(tp)


新ジャズ・マスターズ

 恒例のフォト・セッションの後、いよいよ式典はローズ・シアターで始まる。残念なことに、ジャズ・アット・リンカーン・センターでの授賞式&セレモニーは、今年で最後となってしまうようだ。よって、例年よりもさらに盛りだくさんなプログラムが進行する。新ジャズ・マスターズの業績をショート・ヴィデオで紹介し、ゆかりの深い現ジャズ・マスターがプレゼンターを務めるのは、いつも通りだった。しかし、新ジャズ・マスターズをフィーチャーしてその代表曲を演奏するというプログラムの替わりに、歴代ジャズ・マスターズの曲を、現ジャズ・マスターズと、若手ミュージシャンの組み合わせで演奏し、新ジャズ・マスターズは後半のハイライトで、全員で演奏するという構成になっていた。

 NEAのチェアマン、ロッコ・ランデスマンの開会宣言に続いて演奏したのは、大ヴェテラン、フィル・ウッズ(as)と、その愛弟子で、韓国系アメリカ人の若手女性サックス・プレイヤー、グレース・ケリー(as)が、ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラをバックに、堂々たる師弟対決を繰り広げた。ディジョネットの授賞の拍手をカーム・ダウンさせたのは、昨年度に選出されたジャズ・マスターズのヒューバート・ローズ(fl)と、ロン・カーター(b)の繊細なデュオだ。チコ&マーク・フリーマンの代理授賞のあとは、やはり昨年度のジャズ・マスターズ、デイヴ・リーヴマン(ss)と、アジア人唯一のジャズ・マスターズ、穐吉敏子(p)、キューバ出身のキャンディド(per)に、トランペットのヤング・ライオン、アンブローズ・アキンムシーレがビッグバンドをバックに、ホレス・シルヴァー(p)の“セニョール・ブルース”で、ゴージャスなソロ・ソロバトルを展開する。ボビー・ハッチャーソン(vib)は、酸素チューブを装着していながらも、ケニー・バロン(p)と熱いプレイを聴かせてくれた。昨年亡くなったフランク・フォスター(ts)の"Who Me?"はTwo Frankでベイシー・オーケストラの黄金時代を支えた、フランク・ウェス(ts,fl)とベニー・ゴルソン(ts)に、若手のクリス・バワーズ(p)&ビッグ・バンドで、トリビュートを捧げる。そして、本年度ジャズ・マスターズに、ヘイデンの代理で、ロン・カーターが参加し、オーネット・コールマン(as,tp,vln)の"When will the Blues Leave?"に、ジョーダンが即興で歌詞をつけて歌い大きな拍手を、浴びていた。


ロッコ・ランデスマン


フィル・ウッズ(as)とグレース・ケリー(as)


穐吉敏子(p)


ヒューバート・ローズ(fl)とロン・カーター(b)


ケニー・バロン(p)とボビー・ハッチャーソン(vib)


デイヴ・リーヴマン(ss)とアンブローズ・アキンムシーレ(tp)



クリス・バワーズ(p)

フランク・ウェス(ts,fl)

ロン・カーター(b)

 来年度からも、ジャズ・マスターズの顕彰は続くそうである。ジャズのリヴィング・レジェンドが一同に会する、この壮観とも言うべきイヴェントの復活が、心待ちされる。


シーラ・ジョーダン(vo)とジミー・オーエンズ(tp)とロン・カーター(b)

Set List :

1. "Things to Come" (Dizzy Gillespie)
   featuring Phil Woods (as), & Grace Kelly (as), J@LC Orchestra
2. "Little Waltz~Memories of Minnie" (Ron Carter & Hubert Laws)
3. "Senor Blues"(Horace Silver)
   featuring Toshiko Akiyoshi(p), Candido Camero(per),
         Dave Liebman(ss) & Ambrose Akinmusire(tp), J@LC Orchestra
4. "In Your Own Sweet Way"(Dave Brubeck)
   featuring Kenny Barron(p) & Bobby Hutcherson (vib)
5. ho Me?" (Frank Foster)
   featuring Benny Golson(ts), Frnak Wess (ts) & Kris Bowers (p)
6. "When will the Blues Leave"(Ornette Coleman)
   featuring Jack DeJohnette (ds), Sheila Jordan (vo), Jimmy Owens (tp) & Ron Carter (b)
7. "Again and Again" (Benny Carter)
   J@LC Orchestra


関連ウェッブサイト

NEA Jazz Masters
http://www.nea.gov/honors/jazz/

Jazz at Lincoln Center
http://www.jalc.org/