N.Y.ジャズ見聞録 

 31 IAJE(国際ジャズ教育者協会)年次総会
in ニューヨーク

 "The Big Apple - Jazz to the Core" Part 1

 

 今年も、年明けの恒例ビッグ・イヴェント、IAJE(国際ジャズ教育者協会)の年次総会が、3年ぶりにニューヨークで開催された。ミュージシャン、教育者、教育機関、レコード会社、出版社、プロダクションらの音楽産業関係者、学生、一般リスナーらが、一体となって、1/21〜1/24の4日間、ニューヨーク、ミッド・タウンの、ヒルトン・ホテルとシェラトン・ホテルは、ジャズ鳴りやまぬパラダイスとなった。およそ世界35ヶ国から、8,000人以上を集めて催かれた本大会は、例年以上の300近いライヴ・パフォーマンス、奨励賞、功労賞の授与式、クリニック、パネル・ディスカッション、研究発表、シンポジウムが同時進行し、200に及ぶ大学、楽器メーカー、レコード会社、出版社、プロダクションの展示ブースが出店された。


ヒルトン・ホテルはIAJE一色


IAJE参加登録カウンター

 IAJEとは、International Association for Jazz Educationsの略であり、ジャズ・ミュージックの国際的な教育システムの発展と進歩に寄与することを目的とする会員制組織である。1968年アメリカで、National Association of Jazz Educators (NAJE)として発足し、89年に現在の国際組織に拡大した。現在世界40カ国に8,000人以上の会員を擁し、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア。ラテン・アメリカ、南アフリカなどに支部がある。今年で31回を迎えた年次総会、機関誌”Jazz Educators Journal"の発行、功労者への授賞、奨学金の授与、教育者の養成、コンベンションの主催などを主な活動内容とする。

 1/21に参加登録(誰でも可能)をすませ、いよいよ夜のコンサートから、IAJEは始動する。4日間で数々のグレート・パフォーマンスの舞台となるヒルトン・ホテルのグランド・ボールルームには、ウィントン・マーサリス(tp)率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラのアフロ=ラテン・ヴァージョン、美しいコーラス・ハーモニーが売り物のテイク6らが登場した。IAJEの会期中は毎夜午前2時過ぎまでコンサートが楽しめる、シェラトン・ホテルのインペリアル・ボールルームには、ミッシェル・カミーロ(p)・トリオ、ダーヴィッド・サンチェス(ts)・セクステットが演奏、前夜祭の盛り上がりを演出した。


ジュリアード音楽院の精鋭達

 22日の朝9時からは、クリニックやパネル・ディスカッション、学生グループを中心としたパフォーマンスも、2つのホテルの大小16の会場で開始される。12時に登場した地元ニューヨークのジュリアード音楽院のジャズ・オーケストラには、前夜のジャズ・アット・リンカーン・センター・アフロ=ラテン・オーケストラに学生ながら参加しているメンバーもおり、ハイレベルな演奏を聴かせてくれた。陸軍軍楽隊のグループ、ジャズ・アンバサダーズは、フィル・ウッズ(as)をフィーチャーして、圧倒的なヴォリュームを誇示する。午後2時のメイン会場、ヒルトン・ホテルのグランド・ボールルームは、恒例のキック・オフ・イヴェント、ジェネラル・コンファレンスが開催される。デヴィッド・ベイカー会長のスピーチを皮切りに、年次報告がなされた。続いてASCAP(アメリカ著作権協会)/ IAJE合同の名誉賞が長年の功績を称えてクインシー・ジョーンズ (本人欠席)に贈られ、若手・中堅ミュージシャンへのオリジナル曲を評価する奨励賞のギル・エヴァンス賞は、パスカル・ル・ベーフ(p)と、フレッド・ストゥーム(arr.)が受賞し、記念演奏を披露した。


ヴォリューム全開、ジャズ・アンバサダーズ

フィル・ウッズ

IAJE会長のデヴィッド・ベイカー

パスカル・ル・ベーフ・クインテット
 毎年IAJEでは、もう一つの重要な授与式が行われる。1982年からNEA ( National Endowment for the Arts 国立芸術基金)が、長年の功績を称えて授与するジャズ・マスターズ賞である。昨年までに、デキシー・ランドから、スウィング、ビ・バップ、クール・ジャズ、フリー・ジャズとあらゆるスタイルのジャズ・マスターズ達66人に授与された。今年は、ジム・ホール(g)、チコ・ハミルトン(ds)、ハービー・ハンコック(p,kb)、ナンシー・ウィルソン(vo)、昨年亡くなったルーサー・ヘンダーソン(p,arr)、評論家のナット・ヘントフが受賞している。23日夜の授与式と記念コンサートに先駆けて、23人の歴代ジャズ・マスターズ受賞者達が集結したフォト・セッションが催された。写真の最後列から左から右にジョージ・ラッセル(p,arr)、デイヴ・ブルーベック(p)、後列から2列めに、デヴィッド・ベイカー(tb)、ナット・ヘントフ(評論家)、ビリー・テイラー(p)、パーシー・ヒース(b)、3列め、チコ・ハミルトン(ds)、ジム・ホール(g)、ジェイムス・ムーディー(ts)、4列めジャッキー・マックリーン(as)、ジェラルド・ウィルソン(tp)、ジミー・ヒース(ts)、5列めロン・カーター(b)、アニタ・オデイ(vo)、6列めランディ・ウェストン(p)、ホレス・シルヴァー(p)、最前列左からベニー・ゴルソン(ts)、ハンク・ジョーンズ(p)、フランク・フォスター(ts、着席)、セシル・テイラー(p)、ロイ・ヘインズ(ds)、クラーク・テリー(tp、着席)、ルイ・ベルソン(ds)、ダナ・ジオイア(NEA代表)となっており、1958年にフォトグラファー/アート・ディレクターのアート・ケーンが企画、撮影した当時のジャズ・ジャイアンツを、ワン・フレームに収めた”A Great Day in Harlem”を凝縮した、2004年ヴァージョンが撮影された。

23人のリヴィング・レジェンド達

今年のジャズ・マスターズ賞受賞者、ジム・ホール

久し振りにNYにあらわれたホレス・シルヴァー


クラーク・テリーをフィーチャーして、再登場のヒース・ブラザース


グレイト・ドラマーズ、ロイ・ヘインズとチコ・ハミルトン

 授与式は、IAJEとNEAの代表者スピーチのに続き、ジャズ・マスター達の会場入場があり、オープニング・パフォーマンスには、ヒース・ブラザースが登場した。プレゼンター、ロイ・ヘインズがステージに現れ、受賞者の紹介とショート・ドキュメンタリー・ヴィデオの上映、そしてチコ・ハミルトン本人のスピーチというパターンで、次々と進行する。唯一欠席だったハービー・ハンコックは、ブルー・ノート・レーベルの僚友で大先輩のホレス・シルヴァーの紹介で、ヴィデオ・レターが公開された。矍鑠としたプレイのクラーク・テリーをフィーチャーしたヒース・ブラザースの演奏も、けっして絶えないビ・バップの炎を燃やし続けている。

(Part 2に続く)




関連ウェッブサイト

IAJE
http://www.iaje.org

NEA Jazz Masters Fellowship
http://www.nea.gov/honors/jazz/index.html