この日の夜、シェラトン・ホテルのインペリアル・ルームに出演したのは、マリア・シュナイダー・ジャズ・オーケストラだ。マリア・シュナイダー(arr.)は、イーストマン・スクール・オブ・ミュージックで、ボブ・ブルックマイヤー(arr.
tb)に師事。1985年にNYに進出し、メル・ルイス・オーケストラ、ギル・エヴァンス・オーケストラで、アシスタント・アレンジャーを務め、モダン・ビッグ・バンドのフルーティな果実を吸収する。93年に自らのグループを結成すると、すぐに頭角をあらわしギル・エヴァンスに捧げたデビュー・アルバム”エヴァンセンス”は、IAJEの奨励賞であるギル・エヴァンス賞を受賞したにとどまらず、グラミー賞にノミネートされる。それから10年、着実にキャリアを積み上げてきたシュナイダーのオーケストラは、ニューヨークでもっとも評価の高いビッグバンドに成長した。10年前のIAJEでも演奏した”エヴァンセンス”でオープニングを飾り、全米の大学や、ヨーロッパの放送局、リンカーン・センターの依頼で書いたオリジナル・チューンを次々と演奏、幅広い活躍を印象づけた。スウィング・グルーヴにとどまらない、色彩感のあるハーモニー、有機的な楽器間の連携、インプロヴィゼーションとアレンジメントの絶妙なバランス、大胆なパーカッション・ワーク、これらはスイング黄金時代、ビ・バップ・ムーブメントを経て、よりアレンジメントを重視したなクール・ジャズ推し進めたマイルス・デイヴィス(tp)の、ブレーンとして協力したギル・エヴァンス(arr.kb)とジョージ・ラッセル(arr,p)らに、源流を見いだすことができる。ジョージ・ラッセルは、今回のIAJEに、ニュー・イングランド・コンサーヴァトリーの教え子達を指揮し、久し振りにNYの聴衆の前に姿を現した。(詳しくは次回にリポート。)また、ジャズ・アレンジメントを探求すると、必ずそびえ立つ巨人、デューク・エリントン(p,arr.)のアヴァンギャルドな系譜を引く、サド・ジョーンズ=メル・ルイス・オーケストラも、現在はヴァンガード・オーケストラとして健在であり、最終日のステージで往時を彷彿させる演奏で、気を吐いていた。これらのエッセンスを、すべて備えるシュナイダー・サウンドにもっとも大きな影響を与えているたのは、大学院の主任教授だったボブ・ブルックマイヤーである。最終日に同じインペリアル・ルームに、現在の拠点であるオランダからニュー・アート・オーケストラを率いて登場したブルックマイヤーは、堂々たる貫禄を聴かせてくれた。ブルックマイヤーの指先で、鮮やかに昇華するサウンドは、マリア・シュナイダーの中にも脈打っている。人数や演奏スペースの問題で、維持するのには商業的に困難が伴うビッグバンドのライヴは、ニューヨークですら、ほぼ公開リハーサルのようなクラブのレギュラー・ギグ以外では、なかなか聴く機会が少ないが、レアなグループも出演し、モダン・ビッグバンドの進化のプロセスを、体感できる3日間であった。
オーケストラを楽器のように奏でるマリア・シュナイダー
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ボブ・ブルックマイヤー&ニュー・アート・オーケストラ
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伝説の理論家、ジョージ・ラッセル
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サド=メル・サウンドを継承するヴァンガード・オーケストラ
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アマチュア・グループも、ひけをとっていない。クラッシカル・ミュージック・スクールとしての評価も高いマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックは、70人以上の編成のシンフォニー・オーケストラで、ボブ・ミンツアー(ts)をフィーチャーした。デイヴ・リーブマン(ts,ss)は、ニュー・スクールをはじめ、いくつかの大学生グループのスペシャル・ゲストとして演奏し、ジャズ・スクールとしては長い伝統を持つボストンのバークリー音大は、メイン・ステージで活躍したニューヨーク・ヴォイセスのような男性2人、女性2人の絶妙なヴォーカル・ハーモニーを聴かせてくれる。日本からも関西の社会人ビッグバンド、グローバル・オーケストラや、旭川の中学生グループ、JMIAジュニア・ジャズ・オーケストラが参加し好評を博した。
マンハッタン・スクール・オブ・ミュージック・シンフォニー
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ボブ・ミンツアー
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エンタテインメントたっぷり、バークリー音大のコーラス・グループ
リーダーの野々村さん
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神戸からやってきたグローバル・ジャズ・オーケストラ
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コンボ演奏でも、師匠のフィル・ウッズ(as)との共演を、ケニー・バロン(p)、ルーファス・リード(b)、ビリー・ハート(ds)の強力なサポートで果たしたジョージ・ロバート(as)、マイケル・ブレッカー(ts)、デイヴ・リーブマン(ts,ss)、ジョー・ロヴァーノ(ts)の現代サックス・シーン3巨頭の壮絶なセッション(詳しくは後日リポート)、メイン・ステージを盛り上げたキューバン・ジャズの巨匠パキート・デリヴェラ(as)や、ニューヨークを本拠地に活動する多くのミュージシャンが覇を競い合った。レーベルのショウ・ケースでも、昨年日本でも大ブレイクしたHiromiこと上原ひろみがテラーク・レーベルの一押し新人として登場した。セカンド・アルバムの録音も終了し、オリジナリティたっぷりのメロディ・センスと、新人離れしたシャープなリズムが生み出すプログレッシブ・ジャズともいえる独自のスタイルはアメリカでも注目され、今年のさらなる活躍が期待される。
ジョージ・ロバート&フィル・ウッズのアルト・マッドネス
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アメリカでも注目を集める上原ひろみ
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最先端を行くプロフェッショナルから、アマチュアまで、大ベテランから、デビューしたばかりの新人アーティストと、ニューヨークならではの幅広いミュージシャン達が集合し、ジャズ・ミュージックというアメリカが生んだ偉大なカルチャーを、シェアする4日間。若い世代に伝えられるジャズの種子は、大学、出版社、レコード会社など教育機関、音楽産業の、豊かな土壌を得て、やがて大きな実を結んでほしい。来年はロス・アンジェルス郊外のロング・ビーチで開催される。2006年には、またニューヨークに帰ってくる年次総会だが、それぞれの政治的、商業的な思惑を超越し、ジャズ・コミュニティとともにある発展を望みたい。
関連ウェッブサイト
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このウェッブサイトから、早期申し込み、ホテル予約は例年8月頃からできますので、チェックしてみてください。活動内容、来年の総会のプログラムも詳細にわかります。参加費は4日間通し参加のみで$200.00〜$250.00ぐらい(開催地により金額が変わります。)+ メンバー登録料、学生は、約半額です。ホテルも、特別割引料金が用意されています。
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