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2021/10/29

『ビバップ・エチュード・シリーズ』日本語版発売記念 ジム・スナイデロ・インタビュー Vol. 2


Jim Snidero(as ,fl)

ニューヨーク在住のアルト・サクソフォン・プレイヤー/作曲家/教育者
EMI / Milestone / Savant その他のレーベルからソロやサイドマンと して 50 以上の作品をレコーディングし、Downbeat Magazine のクリ ティクスおよびリーダーズポールに輝く。またジャズ・コンセプション・ シリーズの著者としてもよく知られ、インディアナ大学/プリンストン 大学の教授として、ニュースクール/コンテンポラリー・ミュージック の講師としても活躍する。

(インタビュアー/常盤武彦)

―では続いてニュー・アルバム『Live at Deer Head Inn』(Savant)について、お話を聴かせてください。今までのスナイデロさんのアルバムは、オリジナル曲が中心でしたが、このアルバムは、スタンダード・チューンで構成されてます。これは、『ビバップ・エチュード』とリンクして制作なさったのですか?また昨年の11月末だと、まだコロナ・パンデミックが終息してない状況だったと思います。レコーディングの経緯をお話しください。

JS : スタンダードで構成したのは、ミュージシャンたちが、8ヶ月オーディエンスを前にして演奏していなかったので、慣れた曲を心地よく演奏できることを考えてのことだ。意図したとおり、彼らはマジックな演奏をしてくれた。『ビバップ・エチュード』とのリンクは、偶然の一致だよ。

―客席は50パーセントほどに制限したのですよね。何人ぐらいのオーディエンスが来られたのですか?

JS : 結構大きなクラブだったので、5、60人はいたと思う。リズム・セクションは、マスクを着用してたけど、私はもちろんサックスをプレイするので外し、客席も食事をするので外していた。ライヴ・ミュージックを渇望していたオーディエンスの反応は素晴らしく、それに刺激されて私たちも、慣れ親しんだスタンダード・ソングで、さらにディープなインタープレイが可能となり、その演奏がさらにオーディエンスを盛り上げるという、素晴らしい相乗効果のヴァイヴスが生み出された。このアルバムの枠組みはビバップだけれども、1960年代のウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)が在籍した頃のマイルス・デイヴィス・クインテットのように、インタラクティヴで複雑なハーモニーが進行するプレイができたと思う。

―ビバップの枠組みの中で、コンテンポラリーなスタイルの演奏が展開されたのですね。

JS : 私は今までの自分のリーダー・アルバムでは、オリジナルを中心に演奏していて、こういうスタイルのアルバムは制作してこなかった。私のパンデミック前の最後のギグは、ヴェロニカ・スウィフト(vo)とのストックフォルムでのコンサートで2月28日だった。それからぴったり8ヶ月後の10月31日にこのアルバムを収録した(実際には11月10日にも収録されている)。その間、練習はしていたけれども、やはり観客を前に演奏するのにこれだけブランクが開くと、ある種のプレッシャーも感じる。メンバーも同様と思い、スタンダード曲を選んだが、これが大正解だった。

―ピーター・ワシントン(b)、ジョー・ファーンズワース(ds)、オリン・エヴァンス(p)ら、メンバーについてお話しください。ピーターとジョーは、『ビバップ・エチュード』のサンプル演奏CDでもプレイしてますよね。

JS :ピーターと、ジョーは、長年ギグやレコーディングを共にしてきた、最も信頼しているアーティスト。この二人のコンビネーションで、本当にタイトだ。だから『ビバップ・エチュード』でも彼らにお願いしたし、また失敗の許されないライヴ・レコーディングに彼らを起用するのも当然の選択だった。日本の皆様にも、『ビバップ・エチュード』と『Live at Deer Head Inn』の両方における彼らの演奏の素晴らしさを、感じてもらいたい。

―ピアニストだけは、マイク・ルドーンに代わって、オリン・エヴァンスが起用されています。

JS : オリンは、インタープレイの進め方が、マイクとは微妙に異なっている。彼はフィラデルフィア出身で、ニューヨークのミュージシャンとはちょっと違うプレイをする。リズムがもっと大らかで、ソウルフルなんだ。ピーターとジョーの、素晴らしくスウィングするリズムにオリンを加えると、よりファンキーで有機的なプレイになると思った。それによって音楽を、より予測不能なスリリングな展開にできると、確信したんだ。驚いたことに、オリンと、ピーター、ジョーは、3人ともNYのアッパー・ウェストサイドのジャズ・クラブ”Smoke”を拠点に活動しているのに、今まで一度も共演したことがなかった。彼らは初共演にエキサイトしてたよ。アルバムの演奏に、その興奮を聴き取れるだろう。



-8ヶ月ぶりの有観客での演奏、あえてセレクトしたスタンダード・ソング、そして長年お互いのことを知っていながらの初共演と様々な要素が絡まって『Live at Deer Head Inn』は完成したのですね。まさに、まだコロナ禍の暗雲が立ち込めていたジャズ・シーンに差し込んだ一筋の光のような作品だと思います。ニューヨークのジャズ・シーンも6月下旬からジャズ・クラブも再開し、今年はジャズ・フェスティヴァルも徐々に戻ってくると思われます。スナイデロさんの新たなプロジェクトについて、お聞かせください。

JS : 2001年9月11日の同時多発テロ事件の朝、私はアルバム『Strings』(Milestone/JVC)のレコーディングへスタジオに向かっていた。あれから20年、それを記念して『Strings』を今の所属レーベルのSavantから再発売し、スポッティファイや、アップル・ミュージックといったデジタル・プラットフォームでも初めてリリースする。そしてこのセッションの再現コンサートも開催しようと思っている。9月には、スウェーデンとドイツへのツアーもあるし、やっとジャズ・ミュージシャンの日常に戻ることができそうだ。

―コロナ・パンデミック後のジャズ・シーンをどう考えますか?私は、最近インタビューした多くのアーティストに同じ質問をしてます。中世のペスト・パンデミックの後に、ルネッサンスが花開き、全ての芸術が爆発的に進化しました。そのようなことが起きることを期待したいと語る人もいました。

JS : そう願いたいね。そして人々がライヴ・ミュージックの素晴らしさ、楽しさ、そして音楽の社会への重要性を再認識して、ミュージック・ビジネスが良くなることを期待したい。ミュージシャンは音楽を通して、人々に伝えたいことがたくさんあったけど、パンデミック期間中、制限されていた。それが解除されるから、すごいことになると思う。ただ、昨年からニューヨークを離れて、ヨーロッパやアメリカ中西部に移るミュージシャンもいた。ニューヨークの物価は高すぎて、仕事が制限されたミュージシャンには、試練の時だったのだ。だから、ジャズ・シーンも、今までとは違った形になるのではと思う。

―教育の分野に関しては、パンデミック後はどう変わると思いますか?

JS : Zoomとかを介したオンライン・レッスンは今後も続くと思うけど、やはり対面授業の重要性がさらに増すと思う。オンラインで、学生を刺激し続けるのには、限界がある。対面で、直接プレイを聴かせて話す方が、学生にとって、はるかに大きな刺激になる。

―日本でスナイデロさんの本で学ぶ人たち、あなたのファンへのメッセージをお願いします。

JS : 日本でも長い間、演奏活動を続けることができ、皆様のサポートに感謝しております。2022年には、また皆様に日本でお会いできることを、楽しみにしております。

―本日は、長い時間ありがとうございました。またNY、もしくは東京でお会いしましょう。

2021年5月24日 リモート・インタビュー



アルバム紹介
Live at Deer Head Inn』Jim Snidero (Savant)
2020年の10月末、コロナ・パンデミックの状況がNYよりも安定していたペンシルヴェニア州で録音されたライヴ・アルバム。激しいインタープレイの応酬と、熱狂する観衆が捉えられた、コロナ下の貴重な音楽ドキュメントである。

『Strings』Jim Snidero (Milestone/JVC)
2001年に録音されたストリングスをフィーチャーした作品。「River組曲」は、秋吉敏子(p)のアレンジにインスパイアされたと、スナイデロは語っている。
『Storm Rising』Jim Snidero (Ken Music)
最新作でも共演しているピーター・ワシントン(b)、2013年に亡くなったマルグリュー・ミラーをフィーチャーした1990年録音のアルバム。若きジム・スナイデロの、スピード感あふれるプレイと、美しいバラードが聴ける快作。
『In Process』Brian Lynch (Ken Music)
『ビバップ・エチュード トランペット』でもプレイしているブライアン・リンチ(tp)の1990年の作品。最後のジャズ・メッセンジャーズのメンバーだったリンチが、アート・ブレーキー(ds)逝去の直後に録音したトリビュート・アルバム。スナイデロのハード・バップ・プレイも光る。
『Strings』『Storm Rising』『In Process』はATNのウェッブサイトで、好評発売中。