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2021/10/29

『ビバップ・エチュード・シリーズ』日本語版発売記念 ジム・スナイデロ・インタビューVol.1


Jim Snidero(as ,fl)

ニューヨーク在住のアルト・サクソフォン・プレイヤー/作曲家。
EMI / Milestone / Savant その他のレーベルからソロやサイドマンと して 50 以上の作品をレコーディングし、Downbeat Magazine のクリ ティクスおよびリーダーズポールに輝く。またジャズ・コンセプション・ シリーズの著者としてもよく知られ、インディアナ大学/プリンストン 大学の教授として、ニュースクール/コンテンポラリー・ミュージック の講師としても活躍する。

(インタビュアー/常盤武彦)

「私の新たなエチュードを、世界中のジャズ・インプロヴィゼーションを学ぶ人々に届けたい」

アルト・サックス・プレイヤーのジム・スナイデロが1996年に出版した、マイナス・ワンCDが付いた実践的な教則本『ジャズ・コンセプション・シリーズ』、全世界で絶大な支持を獲得した。同書は各楽器ごと初級編、中級編と展開し、40冊を超えるシリーズとなり、ジャズ・インプロヴィゼーションを志す学生の必読書となり、現代ジャズ・シーンの若手プレイヤーも、この本で、アドリブの基礎を学んだと語っている。スナイデロは、新たな教則本シリーズ『ビバップ・エチュード The Essence of Bebop』をスタートした。また、まだコロナ禍の昨年11月末に、感染率の低いペンシルヴェニア州で8ヶ月ぶりの有観客ギグを収録したライヴ・アルバム『Live at Dear Head Inn』もリリースした。同作は、スナイデロの原点のビバップ/ハード・バップのフォーマットに則ったプレイで、偶然にも『ビバップ・エチュード』とリンクしている。ニューヨークのスナイデロに、zoomでインタビューし、新たな教則本シリーズと、ニュー・アルバムについて訊いた。

―あなたの新たな教則本シリーズ『ビバップ・エチュード』を拝読し、サンプル演奏も全て聴かせていただきました。ベスト・セラーになった『ジャズ・コンセプション』シリーズと同様に、とても実用的なインプロヴィゼーション・エチュードだと思います。この本を執筆するきっかけ、『ジャズ・コンセプション』シリーズとの相違点などをお話しいただけますか?

ジム・スナイデロ(以下JS): 2017年に『ジャズ・コンセプション』シリーズの出版元であるアドヴァンス・ミュージックからジャズ・ブルースにフォーカスした『The Essence of Blues』の執筆の依頼を受けた。その執筆を進めるうちに、ブルースに限定しないジャズのスタイルと、様々なアーティストのアプローチを分析した教則本のアイディアを思いつき、私から出版社に提案した。『ジャズ・コンセプション』シリーズは、ジャズ・インプロヴィゼーションについての私のアイディアに基づいて書いている。スタンダード・チューンのコード進行を借用した私のオリジナル曲に、私の考えたアドリブを乗せていて、特定のアーティストについては言及していない。またテキストもあまり書いていなくて、ソロについての詳しい解説も加えていない。『ビバップ・エチュード』は、セロニアス・モンク(p)、アート・ブレーキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズ、バド・パウエル(p)、ホレス・シルヴァー(p)、マイルス・デイヴィス(tp)、チャーリー・パーカー(as)、ディジー・ガレスピー(tp)、ジョン・コルトレーン(ts,ss)、フレディ・ハバード(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)の代表的な演奏のコード進行を借用したオリジナル曲に、彼らのラインの使い方、メロディ・シェイプやインプロヴィゼーションのアプローチを研究し、それに基づいて、私がソロを構成した。彼らのブルース、循環コード、バラードや、速いテンポの曲への卓越した解釈を、私が大学で学んだように理論的に詳しく解説している。プロフェッショナル・ミュージシャンの視点からの、実践的なインプロヴィゼーション・エチュードができたと自負している。いわゆるビバップと、ビバップにゴスペルやR&Bの要素が加わり、サウンドが洗練されたハードバップの曲が、50/50で並ぶ構成だ。実際、現在のニューヨークのシーンでも、ピュア・ビバップよりも、ハードバップの方が多く演奏されている。チャーリー・パーカーについてだけでも、ブルース、循環コード、バラード、スタンダード曲と、それぞれアプローチが異なり、それだけで、一冊の本が書けるくらいだ。彼以外のアーティストたちも、曲や時代によっていろいろなアプローチを試みているが、今回は、あえてアーティストごとに1曲ずつに絞った。クラッシック音楽を 学ぶとき、バッハを避けて通れないように、コンテンポラリーに至るまで、あらゆるスタイルのジャズのベースには、ビバップがある。ビバップの言語をマスターすることは、ジャズを演奏する上で、必要不可欠だ。この本が、その一助になることを祈っている。

―スナイデロさんがジャズを学び始めた少年の頃、このような教則本は、ありませんでした。あなた自身はどのようにビバップを学ばれたか、お話しください。

JS : 私がティーンエイジャーの頃、フィル・ウッズ(as)のレッスンを受けていた。最初に大きな影響をいただいたアーティストだ。ノース・テキサス大に進学して、ワン・オークロック・ラボ・バンドに参加し、ジャズ理論、ハーモニーのアプローチ、音楽の数学的考え方など、多くの基本的なことを学んだ。私たちは、大学におけるジャズ教育の恩恵を受けた最初の世代だと思う。我々よりも上の世代は、ジャム・セッションで一緒に演奏して学ぶオールド・スクール・スタイルで、ある種の口承伝授を受けていた。これは素晴らしい伝統なのだが、やはり困難が伴い時間もかかる。大学を卒業し、ニューヨークにやってきてジャック・マクダフ(org)のグループに起用された。大学で学んだ理論やテクニックをステージで試し、聴衆の反応や、大ヴェテランのマクダフのアドヴァイスをいただいて、ここからはオールド・スクール・スタイルで、実践的なジャズを学んでいった。秋吉敏子ジャズ・オーケストラに在籍したときは、いつも隣に素晴らしいフルーティストでもあるルー・タバキンがいて、強い影響を受ける。敏子の日本の音楽を取り入れた『孤軍』や『水俣』のアレンジからも大きな刺激をもらった。20年前の9.11の日に録音したストリングスをフィーチャーしたアルバムは、敏子の影響も受けている。私が若い頃には、まだジャズ・レジェンドたちが、バリバリと演奏していて多くのギグもあり、彼らの本物のプレイに触れる機会も多かった。フィル・ウッズは私に「盗めるものは、なんでも盗め」と言ってたけど、私も、キャノンボール・アダレイ(as)やソニー・ステット(as,ts)、そしてもちろんチャーリー・パーカー(as)のアルト・サックスの奏法、コルトレーンやロリンズのフレイジング、マイルスや、ジョー・ヘンダーソン(ts)のソロのアプローチを研究して吸収し、自分自身のスタイルを構築したんだ。今の若い世代は、我々の頃よりも、多くの情報にアクセスしやすくなっているのは、アドヴァンテージだね。




―まさに現在の学校におけるシステマティックなジャズ教育と、オールド・スクールの伝統の口承伝授の両方で現在のスタイルを築かれたのですね。オールド・スクールの口承伝授のスタイルについて、『ビバップ・エチュード』の巻末に掲載されたソニー・スティット(as,ts)についてのケン・ペプロフスキのインタビューは、大変興味深く読ませていただきました。

JS : ケンがソニーを追いかけて、ソニーから多くのことを学んだというあのエピソードこそ、レジェンドたちが素晴らしい演奏をしていた時代の、美しいストーリーだ。今はインターネットやYouTubeで多くの情報にアクセスできるけれど、ケンがソニーから学んだような経験も、とても大切だと思う。

―スナイデロさんの著書は、クオリティの高いサンプル演奏でも知られています。今回の演奏メンバーについてお話しください。

JS : マイク・ルドーン(p)、ピーター・ワシントン(b)、ジョー・ファーンズワース(ds)は、長年レコーディング、ギグで共演している鉄壁のコンビネーションを誇るリズム・セクションだ。このサンプル演奏では、過去のレジェンドたちのプレイを再現するのに最大限に力を発揮してくれた。

―『ビバップ・エチュード』シリーズは、今後続々と楽器別でリリースされます。参加するミュージシャンについてお話しください。

JS : テナー・サックスはグラント・スチュワート、トランペットはブライアン・リンチ、トロンボーンはマイケル・ディース、クラリネットはケン・ペプロフスキ、フルートはアンダース・ボストロムがプレイしている。あとリズム・セクションのみのコンサート・キー・ヴァージョンも出す。ギターや、ピアノのためだけでなく、アメリカの学校のインプロヴィゼーション・クラスには、ヴァイオリンや、オーボエ、フレンチ・ホルンといろいろな楽器で演奏するから、必要なんだ。

―スナイデロさんは、アーティストと教育者という2つの顔をお持ちです。アーティストとして、教育者としてのそれぞれの側面についてお話しください。

JS : 多くのジャズ・アーティストが、学校で教鞭をとっている。私は、ニュースクール大やプリンストン大でいくつかのクラスを持っているけど、フルタイムで教員を務めたことはない。私のとっては、本を通してジャズ教育を行うことが重要だ。エメット・コーエン(p)ら多くの若い優れたアーティストからも「あなたのエチュード・ブックで学んだ」と言われて、本当に誇りに思っている。教室では限られた生徒にしか教えることができないけど、本を通じて世界中のより多くのジャズ・インプロヴィゼーションを志す人たちに、影響を及ぼすことができる。私なりの、ジャズ界への貢献だと自負している。アーティストとして、私は今年62歳になるけど、今まで2、3年に1枚のペースでアルバムをリリースし、多くの経験を積んできた。今も、デイヴ・ダグラス(tp)や、リンダ・メイ・ハン・オー(b)ら、今まで共演してたことのないアーティストと、新しい音楽をクリエイトしている。私が興味を持ち、面白いと思うことに常にチャレンジしてきた。リスナーも同じように感じてくれたらありがたい。『Live at Deer Head Inn』も、ビバップのフォーマットだけど、何度も聴くと新しいアプローチが散りばめられていて、きっと興味深く面白いと感じてもらえると思う。



Vol. 2ではニュー・アルバム『Live at Deer Head inn』についてと、これからのプロジェクトについてスナイデロさんに語っていただきます。