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NY在住の常盤武彦氏による、スペシャル・フォト・エッセイ N.Y.ジャズ見聞録

2012/10/03

ワイクリフ・ゴードン@Jazz Mobile in Harlem


Wycliffe Gordon @ Jazz Mobile in Harlem
若きジャズの伝道師、ワイクリフ・ゴードン〔tb〕が
ジャズ・モービルに乗ってハーレムにやって来た
 先頃、教則本 シラブルで歌う ワイクリフ・ゴードン トロンボーン・テクニック の日本語版が発売されたワイクリフ・ゴードンは、ウィントン・マルサリス(tp)率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラの創設以来の中枢メンバーである。アメリカのジャズ誌の批評家、読者投票でも、常に上位に入る人気を誇りアメリカを代表するアーティストだ。ゴードンは、ジャズの殿堂であるリンカーン・センターだけではなく、ジャズの草の根運動とも言える、ジャズ・モービルにも毎年参加し、コミュニティの人々にその素晴らしい音楽を届けている。
 夏が本格化する7月4日の独立記念日のあとから8月一杯までの夕方、ニューヨークの5つの区の各地に、ピックアップ・トラックに牽かれた移動ステージが、公園や街角にやって来て始まるライヴ、ジャズ・モービルは、数ある夏のニューヨークのイヴェントの中でも、最もコミュニティに密着し、古い歴史を持つコンサート・シリーズである。

 1964年にハーレムのアフロ・アメリカンの若い世代に、自らの生み出したアメリカの偉大な音楽フォーム、ジャズを啓蒙するために、デューク・エリントン(p,leader)の薫陶を受けたピアニストのドクター・ビリー・テイラーらによって立ち上げられ、今年で48年目を迎えた。毎週水曜日、ハーレムの西側、ハドソン川にほど近い、グラント将軍墓地公園を会場に行われるコンサートは、メイン・アーティストが出演し、最も多い観客を集める。

 写真の2010年のワイクリフ・ゴードンのステージは、マイケル・ディーズ(tb)を従えた2トロンボーンの、火を吹くようなバトルに、シンガーのタニ・タイリーを迎え、「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」 などスウィング・ジャズの王道ナンバーを次々と演奏。ステップ自慢の観客が踊りだし、グラント将軍墓地公園が、1930年代から40年代にサヴォイ・ホールなど、ハーレムで隆盛を誇ったダンス・ホールの雰囲気を彷彿させた。リンカーン・センターでの演奏は、アカデミックな雰囲気が漂うが、ハーレムのジャズ・モービルではジャズが人々の日常生活の中で、現代も生き生きと根付いていることを実感させてくれる。


マイケル・ディーズ(tb)

タニ・タイリー
 トロンボーンは、コンテンポラリー・ジャズから、ビッグバンドの中低音域の重要な担い手であり、またマーチング・バンド、古くはデキシーランド・ジャズでも欠かせない楽器である。あらゆるスタイルのジャズに精通するゴードンは、現代のジャズ・マエストロの一人に挙げられる。著書の中で、ベーシックなトロンボーン・テクニックを語っているゴードンだが、そのタイトルにもあるように、まずメロディをスキャットで歌い、アーティキュレーションをマスターすることの重要性を上げている。その音楽哲学から分かるように、じつはゴードン自身が、ルイ・”サッチモ"・アームストロング(tp,vo)のような味わい深い声で歌うシンガーでもある。この日も、トロンボーンを片手に自慢の喉で、聴衆を盛り上げた。
 公園の街灯以外はステージ上の蛍光灯しか照明設備を備えていないジャズ・モービルは、夏時間でまだ明るい午後7時ぐらいに始まり、夜のとばりにあたりが包まれ始める午後8時30分頃に、終わりを告げる。エンディングを飾ったのは、ルイ・アームストロングの十八番の「聖者が街にやってくる」。もちろんゴードンは、ヴォーカルも聴かせてくれ、まさにハーレムの街に音楽聖者がやってきたようだ。2012年は、そろそろ涼しさが増してくる8月18日に、セントラル・パークの北のグレイト・ヒルで、R&Bシンガーのアリソン・ウィリアムスと、またジャズ・モービルに乗ってやって来た。去りゆく夏の一日の終わりを、また音楽の素晴らしさ、愉しさで満たしてくれた。
関連ウェブサイト
Wycliffe Gordon
http://www.wycliffegordon.com/