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NY在住の常盤武彦氏による、スペシャル・フォト・エッセイ N.Y.ジャズ見聞録

2012/12/19

33rd Annual Detroit Jazz Festival from August 31st to September 3rd, 2012.

DETROIT JAZZ and YOU
9月最初の週末、デトロイトに

“ジャズのディズニー・ランド”が出現!

会場となったハート・プラザ

 今年も夏の終わりに、北米最大の無料で愉しめるジャズ・フェスティヴァルを堪能しに、デトロイトにやって来た。金曜の夜のキック・オフ・コンサートから、レイバー・デイ(労働記念日)休日の月曜日まで、4つのステージで66のグループが演奏し、15のトーク・イヴェントが開催される。まさにモーター・シティ、デトロイトがジャズ一色で染まる夢の週末だ。
テレンス・ブランチャード(tp)
テレンス・ブランチャード(tp)
 2012年度のデトロイト・ジャズ・フェスティヴァルは、プログラム編成を担当するアーティスティック・ディレクターに、サックス奏者でもあるクリストファー・コリンズが新たに就任し、ラインナップが刷新された。「原点であるジャズにこだわり抜く。」と高らかに宣言し、様々なフォーマット、年代のジャズ・アーティストをずらりと揃えて開催された。4日間を通して、最多出場をするレジデント・アーティストには、ジャズの故郷ニューオリンズからやって来た伝道師、テレンス・ブランチャードが就任し、フェスティヴァルを盛り上げた。

ソニー・ロリンズ・バンド

ソニー・ロリンズ(ts)

ソニー・ロリンズ(ts)
 今回のフェスティヴァルは、毎晩最後にオオトリの大御所が登場した。初日の夜は、レジデントのブランチャードのレギュラー・クィンテットに続いて登場したのは、アメリカの人間国宝と言っても過言ではない、ソニー・ロリンズ(ts)。グループに復帰した腹心の甥クリフトン・アンダーソン(tb)のサポートで、“セント・トーマス”、”ドント・ストップ・ザ・カーニバル”の十八番曲から、デトロイト出身のスティーヴィー・ワンダー(vo,kb,hmnca)に敬意を表して“可愛いアイシャ(イズント・シー・ラヴリー)”を豪快にブロウし、初日の夜からフェスティヴァルのヴォルテージが、一気に加速した。
チック・コリア(p)&ゲイリー・バートン(vib)

チック・コリア(p)&ゲイリー・バートン(vib)
 2日目は、チック・コリア(p)とゲイリー・バートン(vib)のクリスタル・サイエンス・デュオ、ハーレム・ストリング・クァルテットも参加して、今なおフレッシュな感性の極上の音楽対談を堪能する。コンサートのあとには、彼らの結成40周年を祝福するようにデトロイト川に盛大な花火が打ち上がった。
花火
クリストファー・コリンズ
クリストファー・コリンズ

ウェイン・ショーター(ss,ts)
ウェイン・ショーター(ss,ts)
デイヴ・ダグラス(tp)とジョー・ロバーノ(ts)
デイヴ・ダグラスとジョー・ロバーノ
デトロイト・ジャズ・フェスティヴァル・オーケストラ

デトロイト・ジャズ・フェスティヴァル・オーケストラ
 3日目の夜、フェスティヴァルは最高潮に達する。アーティスティック・ディレクターのクリストファー・コリンズ渾身の企画、ウェイン・ショーター(ss,ts)・クァルテットだ。今年79才ながら、ジャズの最前線で、最もクリエイティヴな音楽をプレイし続けて50年、その創造力はかれることを知らない。まずはデイヴ・ダグラス(tp)とジョー・ロバーノ(ts) の双頭クィンテットが、リスペクトに満ちたオマージュを捧げた。またコリンズは、ショーターのオリジナル・チューンのアレンジ・コンペティションも開催する。ショーター出演前のメイン・ステージには、コリンズ率いるデトロイト・ジャズ・フェスティヴァル・オーケストラが、ショーン・ジョーンズ(tp)や、“インサイド・インプロヴィゼイション・シリーズ”の著者でお馴染みのジェリー・バーガンジィ(ts)をフィーチャーし、ショーターの楽曲の魅力を余すところなく表現した。そしてステージのセッティング・チェンジの間は、コリンズ自らが、ロサンジェルスのショーター自宅で行った、独占インタビューのヴィデオを上映。この孤高の巨人の全貌が、明らかになった。満を持して、ショーターがステージに登場、演奏前には、長年の功績を称えてジャズ・ガーディアン・アワードが授与された。そして2001年結成のクァルテットは、まさに阿吽の呼吸で、独特の間を生かした唯一無二の音楽で、大観衆を飲み込んだ。
 最終日のフィナーレは、かつてショーターも在籍し、幾多の才能をジャズ・シーンに輩出したアート・ブレーキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズ・トリビュート。デトロイトの至宝で、60年代の中枢メンバーだったカーティス・フラー(tb)をシンボルに、レジデント・アーティストのテレンス・ブランチャード(tp)やジェフリー・キーザー(p)ら80年代のメンバーと、ブレーキー役は、現代のハード・スウィンガー、ルイス・ナッシュ(ds)が務めて、高らかなアート・ブレーキー讃歌で幕を閉じた。
アート・ブレーキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズ・トリビュート
アート・ブレーキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズ・トリビュート
カーティス・フラー(tb)
カーティス・フラー(tb)
ルイス・ナッシュ(ds)
ルイス・ナッシュ(ds)
ユニティ・バンド
ユニティ・バンド
 このメイン・ステージのオオトリ・アーティスト群を、大きな背骨として、まだまだビッグ・ネームが登場する。今年最も注目を集めたパット・メセニー(g)のニュー・グループ、ユニティ・バンド、ウィントン・マルサリス(tp)、ジャズの故郷ニューオリンズの伝統を今に伝える、プリザヴェーショーン・ホール・ジャズ・バンドと枚挙のいとまがない。フェスティヴァルの最大スポンサー、老舗アパレル・メーカー、カーハイトのオーナー、グレッチェン・ヴァレイド女史が主宰する、マック・アヴェニュー・レコードからも、看板アーティストのケビン・ユーバンクス(g)や、ケニー・ギャレット(as)らヴェテランから、ティア・ファーラー(as)ら新鋭まで、総出演であった。
パット・メセニー(g)
パット・メセニー(g)
ウィントン・マルサリス(tp)
ウィントン・マルサリス(tp)
ケビン・ユーバンクス(g)
ケビン・ユーバンクス(g)
ケニー・ギャレット(as)
ケニー・ギャレット(as)
バーナード・パーディ(ds)
バーナード・パーディ(ds)
 例年ブッキングされていたR&B、ブルース・アーティスト枠にも、よりジャズ・オリエテッドなアーティストとしてブッキングされたのが、バーナード・パーディ(ds)のスペシャル・ユニット。リューベン・ウィルソン(org)、そしてグラント・グリーン(g)のDNAを継ぐグラント・グリーンJr.(g)、ゲストのドナルド・ハリソン(as)を率いて、極上のシャッフルと、ソウル・ジャズで、ステージを黒く塗りつぶした。ワールド・ミュージック枠では、残念ながらショーターの裏番組だったために聴けなかった、ポンチョ・サンチェス(per)と、テレンス・ブランチャード(tp)の再演や、NYサルサの重鎮、ジェリー・ゴンザレスは、華麗なパーカッション・ワーク、トランペットで魅了した。また午後早い時間帯には、ミシガン州の大学、高校生グループが、あこがれのビッグ・アーティストと共演し、素敵な夏の思い出を残している。深夜には、アーティストが宿泊するマリオット・ホテルのバーで、ジャム・セッションが繰り広げられた。
 この錚々たるラインナップが無料で愉しめるのが、アメリカン・ジャズの懐の深いところだ。また一日$100.00ほどの寄付をすると(ウェブで事前申し込み)、前列15列のリザーヴされたVIPシートに優先的に座れ、食事とドリンクもサーヴされる。ぜひ、日本では考えられないこの大規模フェスティヴァルを、日本の皆様も、チャンスがあれば訪れることを、強くお勧めする。現代アメリカのジャズのすべてを堪能できることは、請け合いだ。来年、ぜひデトロイトで、お目にかかりましょう。
バーナード・パーディ(ds)のスペシャル・ユニット
関連ウェブサイト

Detroit Jazz Festival(英語)  http://www.detroitjazzfest.com