
バンドリーダー/吹奏楽指導者のための
ジャズ・ティーチャーズ・ガイド
定価7,020円(本体 6,500円+税)
著 : Jeff Jarvis (ジェフ・ジャーヴィス) / Doug Beach (ダグ・ビーチ)
翻訳 : 愛川 篤人
監修 : 佐藤 研司
ビッグバンドのリーダー・指導者になったら買いたい赤本&ベージュ本。 初めてのJazz(大学ジュニアバンドなど)や、基礎振り返りには赤、 バンド運営やメンタルトレーニングまで網羅したいならベージュを。
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イージー・ジャズ・コンセプション クラリネット
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
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リズム・トレーニング
著:大久保 宙
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【日本語翻訳解説書付属】The Jazz Singer’s Handbook
著:Michele Weir(ミシェル・ウィアー)
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12キーで練習するジャズ・ライン
著:Steve Rawlins (スティーブ・ローリンズ)
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イージー・ジャズ・コンセプション テナー/ソプラノ・サックス
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
私は仕事柄、ビッグバンドのクリニックのご依頼や外国人によるクリニックの通訳のお仕事を数多く行っています。ですが数時間のクリニックだけでは時間が足りない、まだお話したいことがたくさんあったのに…と感じることも多々あり、そのような場合に必ずおすすめしているのが今日ご紹介する2冊です。2冊ともビッグバンド・ジャズに関する本で、リーダーや指導者に向けた本ですが、演奏者として参加している方にも是非身につけていただきたい視点・観点・示唆にたくさん出会えます。
初めてジャズに接する方には「ブラス・バンドのためのジャズ・アンサンブル コンダクター(赤本)」をおすすめします。ジャズという音楽の特徴、つまり…タンギングの特徴、アクセントはどこに付くのか、クラシックとは音階が違う感じがするがどんな所が具体的には違うのか、アドリブを取るってどういうことなのか、等々、誰もが一度は疑問に思うことが順序立てて書かれています。
実際に本を開いてみると楽譜が多く、どんな音をどう演奏すればよりジャズらしくなって行くのか、をとても具体的に丁寧に説明してある本だということがお分かりいただけることと思います。Doo Bah Dot等という発音の仕方から、インプロヴィゼイション(アドリブ)でのコール&レスポンスの仕方に至るまで…初心者におすすめと書きましたが、中級者や上級者が復習に使っても十分勉強になる内容です。
実はこの本はもともと「ブラスバンド部がブラスバンド編成のままで“ジャズスタイルの音楽”に挑戦してみたい場合に使う本」として14冊セットになっているシリーズものの「コンダクター用」の1冊。読み進むと「ドラマー向け」の説明があったり、「トランペット向け」の説明が出てきたりします。
これは、リーダーとして各楽器に目を配らなければいけな立場の私にとっては、非常にありがたい点です(私はピアニストなので、他の楽器の視点で書かれている内容は目からウロコだったりするのです!)。
一方の「ジャズ・ティーチャーズ・ガイド(ベージュ本)」は「かなり突っ込んだ内容の本」と思っていただけると分かりやすいでしょう。フレージングやダイナミクスの話ももちろん出てくるのですが、何と、メンバーオーディションの仕方、選曲のコツ(自分たちの実力と譜面のレベルは合っている方が良いのかどうか、など)、リハーサルの進め方のテクニック等々、赤本とは別の意味で「どんなリーダーでも一度は頭を悩ませたことのある難問たち」に対する著者の答えがずらりと並ぶ本です。
この本を見つけたのは、社会人バンドのリーダーになって数年が経過し、バンドを更に良くするための方策が見つからなくて悩んでいた時でした。目次を見て「こんな本があるんだ!!!」と思わずひとりごとを叫び、高価な本ですが即レジへ持っていったことを今でもよく思い出します。(その後この本を熟読し日々の活動に役立てただけでなく、今でも困ったときには答えを求めてひらいてみるビッグバンド・バイブル的な本になりました。)
内容は他にも、緊張とどう向き合うか、「聴く力」を伸ばすにはどうしたら良いか、クリニックを企画したい時は何に気を付けたら良いか、お金の問題など多岐に渡ります。お気づきかもしれませんが、その代わり、赤本のように譜面がたくさん出てきて、それら一つ一つの奏法について丁寧に説明…というような内容ではありません。
この本は「演奏」だけでなく「運営」のことにも目を向けなければビッグバンドはやっていけないという、ミュージシャン達が忘れてしまいがちなことにきちんと目を向けた本なのです。国内外を見回してみても、この「運営部分」をおろそかにした結果、消滅してしまったビッグバンドは悲しいことにたくさんあります。せっかく良い譜面があり、良いプレイヤーがいても、人間の集まりである以上、上手に気をつけて運営していかなければビッグバンドは無くなる…この非常に現実的な面に目を向けた、画期的な本だと言えるでしょう!
2冊合わせて1万円を超える高価なお買い物ですが、2冊とも、ビッグバンドに携わる者として自信を持っておすすめしたい良書です。
執筆者:ジャズ・ピアニスト 宮嶋みぎわ
~宮嶋みぎわ プロフィール~
ピアニスト・作曲家・編曲家。自身のオリジナル曲のみを演奏するビッグバンドMiggy+ Jazz Orchestraを率いるビッグバンド・リーダーでもある。(株)リクルートに7年以上に渡り勤務した経験があり集団論・プレゼンテーション等に詳しく、独特の切り口で進められるクリニックやレッスンが人気。雑誌・メディアへの執筆も多数。2010年よりアメリカNYで45年に渡り活動するグラミー賞受賞ビッグバンドThe Vanguard Jazz Orchestraの日本代理人となり、日米ジャズ文化の架け橋としても活躍している。