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イージー・ジャズ・コンセプション クラリネット
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
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リズム・トレーニング
著:大久保 宙
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12キーで練習するジャズ・ライン
著:Steve Rawlins (スティーブ・ローリンズ)
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イージー・ジャズ・コンセプション テナー/ソプラノ・サックス
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
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イージー・ジャズ・コンセプション・シリーズ
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
【 こんな経験、ありませんか? 】
歌の先生や他のプレイヤーから、こんなことを言われた経験はありませんか?
「メロディをもう少し崩してみて」
「後半、単調にならないように歌い方変えて」
「もっとスウィングを意識して」
「アレンジを工夫してみたら?」
「キーを上げて(下げて)歌ったほうがいいよ」
「もっとバンドをリードしてほしい」
周りはいろいろなアドバイスをくれますが、じゃあ具体的にどういうエクササイズをして、どんなふうに練習すれば良いのかということについては… 教えてくれないんですよね。「いや、自分はボーカルの専門家じゃないから」とか言って(笑)
【 4つの顔を持つ著者が贈る、ジャズ・ボーカルの解体新書 】
そんなあなたに今回おすすめしたいのが、UCLAのジャズ・ボーカル指導者Michele Weir(ミシェル・ウィアー)の著書「The Jazz Singer’s Handbook」 。Micheleはボーカリスト、ピアニスト、アレンジャー、指導者という4つの顔を持っていて、第一線のジャズ・ミュージシャンとしての実力があり、しかも自分のやっていることを分かりやすい言葉で説明できるという貴重な才能の持ち主です。
たとえば「メロディを崩す」練習として、Micheleは9種類の「崩しかた」を楽譜と音源で実演してくれます。
(2) 離れた2つのメロディ音を、半音と全音の階段でつなぐ
(3) 同じ音が続くメロディの間に、半音をはさむ
(4) メロディにコードのアルペジオ(分散和音)を足してみる
(5) メロディの音を1つだけ全然違う場所に跳ばす
(6) もとのメロディが下がっているところを、逆に上がるラインに変える
(7) メロディ音のオクターブを上げる/下げる
(8) もとのメロディの音数を減らしてシンプルにする
(9) メリスマ(ひとつの歌詞を伸ばしたまま、ピッチを上げ下げする
ざっくり「崩してみてよ」と言われても途方に暮れるだけですが、Micheleのような先生に具体的な練習の仕方を教えてもらうと、自分ひとりでは思いつかないアイディアがみるみる形になる感覚を味わえます。
【 前半は本番のこと、後半は準備のこと 】
この本は、大きく2つのセクションに分かれています。
前半の「Artistry(芸術)」では、4曲のスタンダード・ナンバーを例に挙げて、曲の選びかた、他のプレイヤーとステージに立つ心構え、歌詞の読み込みかた、「ジャズっぽく」歌うテクニック、フレージングと休符の歌いかた、ゼロから学ぶスウィング・フィールを学びます。丁寧でわかりやすい解説と40トラックのCD模範演奏、トラブルシューティング形式でテンポよく進むエクササイズは、達成感も充分。
後半の「Mastery(技術)」では、ジャズ・ボーカリストに必要な「準備作業」を解説します。リード・シート(メロ譜)の書きかた、イントロ&エンディングの作りかた、違うグルーブをアレンジに活かす方法、アレンジャー直伝!このまま使える気の利いたアレンジ例、効率よいリハーサルの進めかた、レパートリーのまとめかた、ジャム・セッションの心構えなど。ジャズ・ボーカルのすべてを「見える化」した、読み応えのある内容になっています。
【 解説書が大幅リニューアル! 】
さらに今回は、日本語翻訳解説書の読みやすさに徹底的にこだわりました。英語版と日本語翻訳解説書をまったく同じレイアウトにすることで、「日本語で読みながら、楽譜の出てくるところだけ英語版を見る」という作業がぐっとラクに。ATNの愛読者の方にけっこう多い「英語の勉強のために原本も欲しい!だって歌うの英語だし!(でも念のため日本語訳も持っておきたい…)」という上級シンガーさんには、ぜひ手に取っていただきたい1冊(というか2冊)になりました。
【 レッスンの教科書にも最適 】
この本のもうひとつの特徴は、レッスンの教科書として使いやすい作りになっていることです。
何となく生徒さんに曲を持ってきてもらって、歌ってもらって、発音直して、メロディさらって、数回通して、ハイおしまい。なんて、ベテラン生徒さんとのレッスンがマンネリ化しつつある時は、本書「Jazz Singer’s Handbook」の出番です。生徒さんに合わせたトピックを選んで、レッスンのどこかで10~15分、エクササイズを取り入れてみましょう。レッスンにぴしっと芯が通るのを感じていただけるはず。
あなたが生徒さんなら、この本をレッスンに持っていってみるというのはいかがでしょう。音大の講義のようにあらゆるトピックをバランスよく学ぶことで、「趣味より上のジャズボーカル」を目指して着実なステップアップを図ることができます。
【 まとめ 】
Michele Weirは、ジャズ・ボーカルのアートとテクニックを、フワフワしたイメージではなく言葉と楽譜と音できちんと説明してくれる指導者です。ジャズを始めて間もないシンガーさんにも分かるシンプルな言葉づかいで、ジャズ・ステージで何年も歌っているシンガーさんにも刺さる深い内容が本全体に詰め込まれています。この機会にぜひ、「The Jazz Singer’s Handbook」でジャズの知識の棚卸しをしてみませんか?読めば読むほど、新しい気づきをもらえる一冊です。
執筆者:中島(木村)小百合
アメリカ英語発音講師、音楽通訳
安心して学べる環境を提供するためクライアントの希望に応じてNDA(秘密保持契約)を結び、レッスン中の話題や情報のすべてについて秘密の厳守を徹底。CM作曲家、メジャー歌手、ドラマ俳優、上場会社役員、通訳、英語講師などから厚い信頼を得ている。