コードとスケールを徹底理解
ジャズ&ポップスのための基礎音楽理論
定価3,300円(本体 3,000円+税)
著 : Frank Haunschild (フランク・ハウンシルド)
翻訳 : 山口 紀子/佐藤 研司
監修 : 佐藤 研司
ミュージシャンに理論は必要? YesかNoか、あなたの答えをこの本で探す!
-
イージー・ジャズ・コンセプション クラリネット
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
-
リズム・トレーニング
著:大久保 宙
-
【日本語翻訳解説書付属】The Jazz Singer’s Handbook
著:Michele Weir(ミシェル・ウィアー)
-
12キーで練習するジャズ・ライン
著:Steve Rawlins (スティーブ・ローリンズ)
-
イージー・ジャズ・コンセプション テナー/ソプラノ・サックス
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
現場第一主義を貫く叩き上げと、名門大学で専門教育を受けた頭脳派。刑事ドラマ並のせめぎ合いは、もちろん音楽の世界でも起きています。
「ミュージシャンに理論(音楽理論、ハーモニック・セオリー)は必要か」という議論は、いつも水掛け論で終わってしまいます。「必要ない」と言う人は理論を実践的に使えるレベルまで知らないことが多く、「必要だ」と言う人は理論で全部解決しようとするせいで心を動かす音楽に結びつかないことが多いように思います。
音楽理論とは、これまで世界に送り出されてきた素晴らしい音楽の数々に何らかの法則や規則はないものかと分析したり、分類したりしたものの集大成。悪く言えば音楽をアタマで捉えようとした結果できた後付けの理論です。勉強したからと言って全員が優れたミュージシャンになるわけではありません。
それでも音楽理論を学んでいれば、自分の手くせでいつも演奏してしまうフレーズの呪いから脱出する糸口を見つけるのは簡単。普段陥りがちなフレーズの構造を分析し、代わりに好きなプレイヤーがよく使うアプローチやフレーズの中でも(理論的に)違うものを試してみて、さまざまなコード進行の上でそのフレーズを12キーで練習してみるわけです。このプロセスを繰り返すだけでも、インプロヴィゼイションの選択肢はみるみる増えていきます。
知っているだけでは何の役にもたちませんが、何かで行き詰まったとき「そういえば理論的にここはどうなっているんだろう…」と考えるときに素晴らしく役に立つツールが音楽理論です。特に学んだ理論を実際の音と結びつける作業(イヤー・トレーニング)と組み合わせて学ぶことで、「あなたが今まで好きだと思ってきたサウンドの裏にはどんな共通点があるのか」という疑問に答えが出ることは多いでしょう。
(イヤー・トレーニングの本をお探しのプレイヤーさんは「リズムと音符につよくなる 楽譜初心者のための やさしいイヤートレーニング」「相対音感をマスターするための 改訂版 イヤー・トレーニング Vol.1」をどうぞ)
ジャズのステージで、ソロイストの後ろでピアニストやベーシストが変なタイミングでニヤっとする時がありますね。あれは大抵の場合、楽譜に書かれたコード進行とはまったく違うコードを暗示するようなインプロヴィゼイションをソロイストが取った時に起きます。お、そこ行くのね。じゃあ俺はこっちで。とベーシストがその進行を発展させ、ピアニストはそれを追いかけ、ソロイストをさらに煽るとソロはどんどん面白いほうに進んでいくという仕組みです。ジャズはこうでなくちゃ!と思う瞬間に私も参加したいと思いながら、なかなか上手くいかないんですよね。
サビ前にこんなコード進行が出てきて、こういうメロディが乗るとグッと来る!しかもこのコードはこっちのコードに置き換えることもできて、サビに向かう感じは保ちながら、でもちょっと期待を裏切る場所に聴き手を連れて行くことができる!さらにサビのアタマのコードはこんなところから持って来ることもできるのか。あれ?ちょっと転調しちゃう?など、音楽の「これはどうなっているんだろう?」の答えを探すうちにインプロヴィゼイションからリハーモナイゼーション、さらにコンポジションまで興味の幅が広がってしまう面白さが詰まっているのも音楽理論の不思議なところ。
本当におすすめしたいのは実は「ザ・ジャズ・セオリー」だったりするんですが(ザ・ジャズ・セオリーはとっても分厚くて重たくてお値段の張る本ですが、読み物としても楽しくて分かりやすいです)、たとえば専門学校の先生が音楽理論のクラスの教科書としてお使いいただく本としては「ジャズ&ポップスのための基礎音楽理論」は最高のチョイスになるでしょう。また、既に楽器演奏のスキルは持っているものの、何となくご自分の音楽に行き詰まりを感じているようなプレイヤーさんは既に耳から理論をご存知なので、この本でステップ・アップを図られるのは丁度よいですよ!
どんな場合も一から十まで読み通してしまおうとせず「自分が今どこまで知っているか」を把握することから始めるのがおすすめです。「ワークブック」ですから、各章の最後にはまとめのテストがついています。11個あるエクササイズを解いてみて、分からないところからぱらぱらと読み始めると、何となく「自分はココがちゃんと分かっていない気がする」というのが見えてきます。勉強に飽きたら譜例を演奏してみましょう。思いがけず大好きなアーティストのサウンドに出くわすかもしれません。長い時間をかけてゆっくりと付き合ううちに、理論と耳のバランスがうまくとれたプレイヤーになることができれば申し分ありませんよね。
私は現在「モード」と格闘中です。頭では分かるんですが、どうもね、自分の音として出てこない感じがします。いつかお会いすることがあれば、その時までに何とかしておきたいですね。それでは!
執筆者:中島(木村)小百合
アメリカ英語発音講師、音楽通訳
安心して学べる環境を提供するためクライアントの希望に応じてNDA(秘密保持契約)を結び、レッスン中の話題や情報のすべてについて秘密の厳守を徹底。CM作曲家、メジャー歌手、ドラマ俳優、上場会社役員、通訳、英語講師などから厚い信頼を得ている。