
ゲイリー・ウィリス ベースを愛する101の方法
定価3,564円(本体 3,300円+税)
著 : Gary Willis (ゲイリー・ウィリス)
翻訳 : 坂本 信
監修 : -
ベース職人が伝授する 使える101の“コツ”
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イージー・ジャズ・コンセプション クラリネット
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
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リズム・トレーニング
著:大久保 宙
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【日本語翻訳解説書付属】The Jazz Singer’s Handbook
著:Michele Weir(ミシェル・ウィアー)
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12キーで練習するジャズ・ライン
著:Steve Rawlins (スティーブ・ローリンズ)
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イージー・ジャズ・コンセプション テナー/ソプラノ・サックス
著:Jim Snidero (ジム・スナイデロ)
長いことベースを弾いていると様々な問題に悩まされ、その度にいろいろな方法を試して、これは使える、これはあまり効果無いなぁ、と言った経験をします。そうして身につけたノウハウは苦悩と出費も伴うものですが、プレイヤーの財産、もしくは弾く上での武器とも言えます。
性格のいいプレイヤーなら気軽に他のプレイヤーに伝授しますが、苦悩した分、そう簡単には明かしたくない部分でもあります。楽器を弾く上で役に立つ“コツ”は実際のフレーズといったこと以外にもあちこちにあって、快適に楽しく弾く以外にもそのプレイヤーの個性にも繋がる非常に大事なものです。そういう私も大したことではないですが、他のベーシストがあまり気にしないところで工夫をして差別化を図ろうとしています。
このゲイリー・ウィリスの本に載せられているのは、そうした“コツ”を101の項目で紹介しているものです。
ゲイリー・ウィリスというとスコット・ヘンダーソン、アラン・ホールズワースといった有名プレイヤーとの共演、Tribal Tech といった活動でも知られるフレットレス・ベースの名手です。彼のプレイはメロディアスかつテクニカルなもので、まさにベース職人といえます。
実際に本書を読み進めていくと、彼がフレーズを組み立て、表情豊かに弾く以外にも、ベースそのものに対してもほんの些細な事から、曲全体を見渡すために様々な点に対していろいろな知識を持っていることに驚かされます。
タイトルの通り、この本は101の章から構成されています。
その最初の章には古くなった弦の再生方法から触れられています。
だいぶ実際に弾くところから離れた話から始まるなぁ、と思いましたが、こうしたことが実はベーシストが知りたいことなのかもしれません。
でもご心配なく。実際にフレーズを弾くうえでのコツも当然触れられていて、プレイに役立つ上での美味しい内容も簡潔に語られています。
ベーシストというと周りからこだわり深い、細かい、といった印象を持たれることが多い様な気がします(楽器を演奏する人間すべてがそういう印象をもたれるかもしれませんが…)。というのも、ベースも含めて、楽器というのはものすごくデリケートな側面をもったものだからです。ちょっとセッティングを変えたり、弦の種類を変えたり、シールドを変えたり、アンプのセッティングを変えたりといったことで、周りで聞いている人にはそれほど分からないかもしれませんが、弾く本人のフィーリングを一変させるものです。またライブやレコーディングなどの現場では演奏する上で様々なメカニカルな要素があるので、思わぬトラブルの可能性もあります。もしあらかじめ知識を持っていれば、トラブルシューティングにもなりますし、より演奏に集中し、楽しく演奏できることにも繋がります。
そのためにゲイリー・ウィリスがこの本の中で伝えようとしていることは、ベースについてあらゆるところの理解を“楽しみながら深めよう”、ということに思えます。
また、自身のプレイ・スタイルでもあるフレットレス・ベースについても多く語られています。実際、今まで謎だったテクニックについても触れられているので、人口ハーモニクスや、ソロ・フレーズの組み立て方などフレットレス・ベーシストにとって美味しい内容となっています。
何しろ、多岐に渡った内容が簡潔に語られているので、読んでいて飽きの来ない本です。ベーシストであれば読み物としても楽しめるのではないでしょうか。
執筆者:石川 具幸
~石川 具幸 プロフィール~
セッションベーシスト。日本大学芸術学部卒業後、ULTRA POPでメジャーデビュー。1995年の解散後、本格的にセッションプレイヤー、サポートミュージシャンとして活動を始める。関わった主なアーティストは、Chara、上田現、元ちとせ、ゆず、柴田淳、SOULHEAD、ALvinoなど。現在はセッションベーシストと並行して、尚美ミュージックカレッジで講師としても後進の育成に精力的に活動中。